映画『ハタケノチカラ』~藤沢北西部の有機農家さんから学ぶ、生きるチカラ~
神奈川県藤沢市北西部の有機農家さんから学んだ、生きるチカラ

ども。
今日も暮らしかた探索中のDadです。
小田急 鵠沼海岸駅 からほど近くにある単館映画館「シネコヤ」で、11月から上映されている映画「ハタケノチカラ」。
評判はどんどん広がり、好評につき翌1月まで延長が決まったと聞きました。1日1回だけの上映に連日ほぼ満席。ようやく2週間先のチケットを予約できたほどです。
鵠沼海岸駅といえば、僕にとって忘れられない場所。
MomとMomの姉カップルと、結婚前に2年ほど同棲していた思い出の街で、ゆったりとした独特の空気感に懐かしくなります。そんな気持ちを抱きながら、徒歩5分ほどの場所にあるシネコヤ。
なんとも言えないレトロな雰囲気が漂い、手づくり感がそのまま佇んでいる建物が迎えてくれます。
「こんな場所があったなんて…」と、今まで知らなかったことに少し後悔してしまうほど、僕好みの映画館でした。朝10時からの上映にもかかわらず、入口にはすでに列ができていました。
館内に入ると素敵な本棚が並び、奥には喫茶室。映画が始まる前からすでに胸が高鳴ります。
2階へ上がり、上映室に入ると、木の椅子とソファが20席ほど並ぶこぢんまりとした空間が広がっていました。その席はほぼ満席ですぐに埋まり、いよいよ上映が始まります。

藤沢の畑から紡がれる、人と土の物語
「ハタケノチカラ」は、僕自身も援農でお世話になっている藤沢市北西部の有機農家さん6組と、その畑に集う研修生、地域のオーガニックショップやマルシェの方々を追ったドキュメンタリー映画です。
スクリーンには、知り合いの農家さんや研修生、オーガニックショップの店主さんが次々と登場しました。それを見て、自分事のように胸が熱くなり、気づけば前のめりになって鑑賞していました。
物語の中心にいるのは、相原農場の相原さん。
江戸時代から続く農家を継ぎ、母と共に慣行農業から有機農業へと舵を切った人。失敗も葛藤も、すべてを力に変え、20年以上に渡って100名を超える研修生を受け入れてきた方です。
そしてもう一人の主役が、現在も研修生を受け入れている にこにこ農園の井上さん。
この2人のレジェンドが、畑の横で、作業小屋で、言葉少なくとも背中で“生き方”を伝えている姿が印象的でした。
映画の中では、相原さんや井上さんに魅了され、人生の転機を迎える研修生や新規就農の農家さんが描かれていきます。
藤沢北西部だけで51戸もの有機農家さんがいるという事実。
しかもそのほぼ全てが相原さん・井上さんの研修を受けた卒業生だと知り驚きました。
卒業生たちはそれぞれの環境や人生と向き合い、土と対話しながら、藤沢のあたたかな人たちに支えられて、自分たちの畑と生き方を築いていく。
その姿はまっすぐで、一所懸命で、美しく感じました。

言葉より強く刺さる“行動力”
あるシーンで、インタビュアーが相原さんに「何の作業をしているのですか?」と質問をしました。
すると相原さんは、間引いた里芋が放っておいたら芽吹いてきたので、余った畝に植えてあげていると答えました。
そして最後にこう付け加えました。
生きようとしているから
付け加えたただその一言が、僕の胸にズシりと響きました。
そして奥様はこう語ります。
「不作でも失敗しても愚痴や弱音を聞いたことが一度もない」
農の厳しさは想像以上でしょう。それでも愚痴を言うかわりに、土に向き合い、人と向き合い、ただ前へ進み続ける。
その姿が、多くの人を惹きつけ、この地域に新しい風を生み出しているのだと感じました。
一方、井上さんの口癖は、
「まっいっか」
それは、無責任な諦めで放たれるのではなく、
(考え抜いて最善を尽くしてみたけれど失敗した。でも次に活かせばいい。だから、まっいっか)
そんな前向きな潔さがその言葉の裏側に宿っているのだと知り、井上さんの懐の深さに感動しました。
「過酷な環境になればなるほど、こういうやり方(自然農法)がチカラを発揮するのではないかと思っている。そういうやり方を確立して次世代に伝えていきたい」
困難さえ肥料に変えていくような強さ。
未来へ、未来へ。前へ、前へ。
諦めずに探求し続ける背中。
相原さんや井上さんの農家としての強い覚悟。
農業や地域の将来を深く考えながら、言葉よりも先に行動する原動力。
土や畑、自然に対して畏敬の念を決して忘れず真摯に向き合う姿勢。
自分に厳しく、周囲にはまるで大地のようにどこまでも優しい。
だからこそ、どのシーンも魅了され、一言一言がズシりと胸に刺さってくる。
知り合いが登場して感情移入したせいなのか、涙が出るほど感動し、登場する皆さんの「生きるチカラ」にただただ圧倒されました。
まとめ
僕もまた、藤沢北西部の有機農家さんに救われたひとりです。
メンタルダウンで休職してすぐの頃。
Momに連れられて訪ねた、映画にも登場する川田商店さん。
そこでまるほ農園の北條さんに出会いました。
「今度、畑に伺ってもいいですか?」
生きる気力すら失っていた当時、勇気を振り絞って声をかけると、北條さんは笑顔で「いつでもどうぞ」と名刺を差し出してくれました。
それから僕は畑に通うようになりました。
北條さんも相原農場で研修を受けた卒業生の一人で、不耕起栽培の自然農を実践する農家さんです。
畑作業の後、ビニールハウスの中で淹れたコーヒーを飲みながら、畑のこと、世のなかの情勢のこと、人生のことを語らいました。
北條さんは、距離感が自然で、無理に励ますこともなく、ただ見守ってくれているような安心感があります。
かつて小学校の先生だったということを知りどこか腑に落ちました。
そんな北條さんのあたたかいまなざしと、畑で過ごす時間が少しずつ僕の心を回復させていきました。それはまさに僕にとっての「ハタケノチカラ」でした。
北條さんにかけてもらった「いつでもどうぞ」という言葉は、今でも心の中であたたかく響いています。
畑で過ごした穏やかな時間と、少しずつ回復していった日々。
映画を観て、その一つひとつが確かに僕を支えてくれたことを思い出しました。
いつか僕も、あの時の北條さんのように、誰かの背中をそっと押せる存在になれたらいいなと思います。
ではまた。


